イエス(Yes)は、1968年にイングランドで結成されたプログレッシブ・ロックの先駆者的バンドであり、複雑な楽曲構成と高度な演奏技術で知られています。彼らの代表的な特徴には、変拍子の大胆な採用や、ロックとクラシック音楽の要素を融合させた独自のアプローチがあります。例えば、アルバム『危機(Close to the Edge)』では、約18分に及ぶ楽曲が3部構成で展開され、宗教的・哲学的なテーマを深く掘り下げると同時に、音楽的にも革新的な構成が注目されました。これにより、プログレッシブ・ロックというジャンルの基盤を築き、多くのフォロワーバンドに影響を与えました。その音楽は、ロック、クラシック、ジャズなど多様なジャンルを融合させた独自のサウンドで、50年以上にわたり多くのファンを魅了してきました。
「イエス」とは?
ジョン・アンダーソン(ボーカル)とクリス・スクワイア(ベース)を中心に結成されたイエスは、幾度かのメンバーチェンジを経ながらも進化を続けてきました。独特の世界観と革新的な音楽性は、プログレッシブ・ロックを象徴する存在として広く認知されています。1970年代から1980年代にかけて、壮大な楽曲とアルバムを発表し続け、ジャンルの壁を超えた音楽を創り上げました。
現在のメンバー紹介
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スティーヴ・ハウ(ギター):長年にわたりバンドを支えるギタリストで、卓越したテクニックと多彩な音楽性を誇る。
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ジョン・デイヴィソン(ボーカル):ジョン・アンダーソンの後を継ぎ、バンドの新しい時代を象徴するボーカリスト。
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ビリー・シャーウッド(ベース):クリス・スクワイアの後任として、力強いベースプレイを展開。
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ジェイ・シェレン(ドラム、パーカッション):ダイナミックなリズムで観客を魅了する。
ジョン・アンダーソンが脱退したのはなぜ?
ジョン・アンダーソンの脱退にはいくつかの理由があります。まず、1980年にバンドを一度離れた背景には、メンバー間での音楽的方向性の違いがありました。アンダーソンは精神性や哲学的要素を重視した音楽を志向しており、アルバム『危機(Close to the Edge)』や『海洋地形学の物語(Tales from Topographic Oceans)』ではその理念が特に反映されました。しかし、他のメンバーは商業的な成功を意識し、よりシンプルで市場に受け入れられやすい楽曲を求めることがありました。この対立がバンド内の緊張を生み、結果的にアンダーソンの脱退につながりました。
2008年に再び脱退した際は、彼の健康問題が大きく影響しました。呼吸器系の疾患により過密スケジュールに耐えられなくなったことが主な原因とされています。また、ツアーやレコーディングのプレッシャーが彼の体調悪化を招いたことも指摘されています。
それでも、アンダーソンはイエスの中心人物としてファンの間で愛され続けています。
イエスの魅力とは?
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複雑な楽曲構成:壮大なスケールの曲が多く、リスナーを非日常的な音楽の旅へと誘います。
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変拍子の多用:ジャズやクラシックからの影響を受けた独自のリズムが特徴。
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高度な演奏技術:各メンバーの卓越した技術が際立ち、個性が融合した音楽を創り出しています。例えば、スティーヴ・ハウのギタープレイは「Close to the Edge」や「The Clap」でその多彩なスタイルと技術力が特に際立っています。また、リック・ウェイクマンのキーボード演奏は「Roundabout」や「Awaken」でその華麗さと壮大なアレンジ力が存分に発揮されています。これらの楽曲は、メンバー個々の技術力を象徴する代表的な例です。
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壮大なコンセプトアルバム:アルバムごとに統一されたテーマと物語性を持ち、聴き手を魅了します。
名曲とその理由
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「Roundabout(ラウンドアバウト)」: アルバム『こわれもの』(1971年)に収録。複雑な構成とキャッチーなメロディでファンを魅了。
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「Close to the Edge(危機)」: 同名アルバム(1972年)のタイトル曲で、約18分にわたる壮大な組曲。プログレッシブ・ロックの代表作。
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「Owner of a Lonely Heart(ロンリー・ハート)」: アルバム『90125』(1983年)収録。ポップな要素を取り入れ、新しいファン層を開拓。
初心者におすすめの曲
イエスを初めて聴く方には「Roundabout」をおすすめします。この曲は、彼らの音楽性を象徴する複雑な楽曲構成とキャッチーなメロディを兼ね備えています。特に、イントロの印象的なギターフィンガーピッキングや、スティーヴ・ハウの多彩なギターワークが聴きどころです。また、リック・ウェイクマンの華麗なキーボード演奏が曲全体に深みを与えています。「Roundabout」は、初めて聴く人にも親しみやすい一方で、イエスの高度な演奏技術を堪能できる一曲として、多くのリスナーに愛されています。
ベストアルバムとおすすめ作品
イエスのディスコグラフィーの中で特に評価が高いのは以下のアルバムです:
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『危機(Close to the Edge)』(1972年): プログレッシブ・ロックの金字塔として知られる作品。壮大な楽曲と緻密なアレンジが特徴。
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『こわれもの(Fragile)』(1971年): 各メンバーの個性が光る楽曲が収録され、多様性と独創性を示す一枚。
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『究極(Going for the One)』(1977年): リック・ウェイクマン復帰後のアルバムで、さまざまな音楽スタイルを融合した作品。
まとめ
2024年現在、イエスはスティーヴ・ハウを中心に活動を続けています。最近では、2023年に新アルバム『Mirror to the Sky』をリリースし、音楽的進化を示しました。このアルバムでは、バンドの特徴である壮大なサウンドスケープを追求しつつ、新しい要素を取り入れた楽曲が注目を集めています。また、デビュー55周年を記念した世界ツアーを精力的に実施中で、日本公演では『海洋地形学の物語』の50周年を記念した全曲メドレーを披露予定です。これに加え、代表曲を網羅したセットリストが組まれており、ファンにとって特別な体験となるでしょう。
イエスは、プログレッシブ・ロックの象徴的な存在であり、音楽史に多大な影響を与えています。複雑で壮大な楽曲や独特の世界観を持つ彼らの音楽は、今なお多くのリスナーの心を捉えています。初心者から熱心なファンまで、幅広い層に愛されるイエスの音楽をぜひ体験してみてください。